【奄美大島】リュウキュウイノシシ狩猟体験|自然と共生する知恵を学ぶ

奄美大島の豊かな自然に生息するリュウキュウイノシシ。
島の文化や自然の象徴である一方、農作物被害を引き起こす存在でもあります。
自然と共に生きるためには、適切な管理が欠かせません。
今回、私たちはこのリュウキュウイノシシと向き合うべく、狩猟に挑戦しました。

目次

リュウキュウイノシシ(琉球猪)とは?

リュウキュウイノシシ(学名:Sus scrofa riukiuanus)は、日本の沖縄県や奄美群島に生息するイノシシの亜種です。

本州や九州などに生息するニホンイノシシ(Sus scrofa leucomystax)とは異なり、小型で、島の環境に適応した独自の進化を遂げた固有の種です。

限られた資源と空間の中で生きるための進化の結果、特徴的な姿や生態を持ち、地域の自然環境や文化とも深く結びついています。

リュウキュウイノシシ(琉球猪)の特徴

体の大きさ

リュウキュウイノシシは、ニホンイノシシと比べてやや小型の体格をしています。

  • 体長:100〜120cm
  • 体重:30〜50kg(※ニホンイノシシは約60〜150kg)

見た目

  • 体色は黒褐色で、毛は短め
  • 鼻先が短く、足も短めで、全体的に丸みを帯びた体型
  • ニホンイノシシよりやや小柄で、耳も短いのが特徴

生息地

  • 奄美群島、沖縄諸島、八重山列島
  • 原生林や山岳地帯に生息、エサ不足時は人里にも出没

行動・生態

リュウキュウイノシシは、主に夜行性で、昼間は藪の中で休むことが多いです。

雑食性であり、植物の根や果実、小動物など幅広い食べ物を摂取します。単独で行動することが多いですが、繁殖期にはペアや親子で行動することもあります。

また、学習能力が非常に高く、嗅覚や聴覚は犬以上ともいわれています。さらに、60kgの重さを軽々と持ち上げられるほどの強い力を持つのも特徴です。

ニホンイノシシとの違い

比較項目リュウキュウイノシシニホンイノシシ
体の大きさ小さい(30〜50kg)大きい(60〜150kg)
鼻先短め長め
短めで丸いやや長い
生息地沖縄・奄美本州・四国・九州
毛色黒褐色灰褐色~黄褐色
繁殖期年2回通常年1回

自然の役割

リュウキュウイノシシは、沖縄や奄美の生態系において欠かせない存在であり、さまざまな面で自然環境に貢献しています。

  • 土を掘り返す習性により、地表の土壌をかき混ぜ、栄養の循環を促進し、植物の成長を助けます。
  • 植物の種を食べて遠くへ運ぶことで、森林の再生や多様な植生の維持に寄与します。
  • 小動物の捕食などを通じて、食物連鎖の一部として生態系のバランスを保つ役割も担っています。

人との関わり

リュウキュウイノシシは、古くから沖縄や奄美地域に生息し、狩猟の対象として人々の暮らしと深く関わってきました。特にイノシシ肉は伝統的な食文化の一部として親しまれ、地域によっては今も食材として利用されています。

しかし近年、農作物への被害が増加しており、農家にとって深刻な課題となっています。このため、個体数の適切な管理が求められています。

また、リュウキュウイノシシはウミガメの卵や幼体を捕食することが知られており、その影響でウミガメの産卵個体数の減少が懸念されています。生態系への影響を考慮しながら、管理のバランスを取ることが重要とされています。

一方で、沖縄県では開発の影響により生息数が減少し、絶滅危惧種(VU)に指定されています。特に徳之島では、山地が少なく、生息に適した森林の減少が進んでいるため、この地域のリュウキュウイノシシは「絶滅のおそれのある地域個体群(LP)」として環境省のレッドリストに指定されています。

人間とリュウキュウイノシシの共存には、農業被害の対策だけでなく、生態系全体を考慮した保全の取り組みが不可欠です。地域の特性に応じた管理を進めることで、持続可能な関係を築いていくことが求められています。

リュウキュウイノシシを捕獲する

近年、「敷地内にイノシシが侵入した」「畑が荒らされた」といった被害が相次ぎ、当社管理地でも出没が確認されました。そこで、狩猟期間中に適切な手続きのもと、対応を実施しました。

捕獲に必要な免許と準備

※イノシシの捕獲には、狩猟免許の取得と都道府県への狩猟者登録が必要です。免許・狩猟者登録をしていない方が罠などを設置して捕獲を行うことは法律で禁止されています。

今回は、イノシシの痕跡(足跡や掘り返した跡など)を観察し、準備していたくくり罠を適切な場所に設置しました。リュウキュウイノシシは非常に嗅覚が鋭く、また警戒心も強いため、最初はなかなか罠にかかりませんでした。

初の捕獲とその後の対応

粘り強く見守り続けた結果、初めての捕獲に成功しました。通常、捕獲後は現場で止め刺し(とめさし)の処理を行うケースが多いですが、鼻くくりによって動きを制限し、生きたままの状態で安全に搬入先へ運びます。

その後も継続して対応を行い、1月下旬から3月15日までの期間に計8頭のイノシシを捕獲しました。

リュウキュウイノシシの捕獲後の扱いについて

リュウキュウイノシシの捕獲後の扱いは、地域の状況や捕獲目的、処理体制の有無によって異なります。しかしながら、現状では衛生面や施設の整備状況などの理由により、「処分(埋却処分)」される割合の方が高い傾向にあります。

命と山の恵みに感謝し、捕獲したイノシシを「ジビエ」として丁寧にいただきます。

衛生的で丁寧な処理の大切さ

おいしく、安全にいただくためには、捕獲後の処理工程が非常に重要です。
捕獲した個体は、迅速に搬入し、絞め・放血・解体・加工といった工程を衛生面に十分配慮しながら丁寧に実施しています。

この処理を怠ると、肉に臭みが残ったり、品質が著しく低下したりする可能性があるため、細心の注意を払っています。

地元の知恵を学ぶ貴重な機会

今回の取り組みでは、地元で経験豊富な熟練者・N様のご指導のもと、一連の作業を実地で学ばせていただきました。
実際に自らの手で経験することで、技術だけでなく「命をいただく」という意識も深まり、今後の活動に大きく役立つ貴重な経験となりました。

リュウキュウイノシシの肉の魅力

適切に処理されたリュウキュウイノシシの肉は、特有の臭みやクセがなく、脂に旨みが凝縮され、上質な味わいが特徴です。また、個体差や食べてきた餌の種類によっても肉質や風味に違いが生まれると言われています。

ジビエに慣れていない方でも安心して楽しめる風味で、ジビエ初心者にもおすすめの食材といえるでしょう。

これからも、自然と共生し、命を大切にする地域の取り組みとして、責任ある捕獲と活用を続けてまいります。

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